close


 昨秋、奈良県橿原市の藤原宮跡(694~710年)で出土した地鎮具に納められていた最古の貨幣「富本銭(ふほんせん)」9枚の字体や成分が、7世紀後半に鋳造工房があった飛鳥池遺跡(同県明日香村)で出土したものと異なる新種とわかった。17日発表した奈良文化財研究所によると、708年に和同開珎(わどうかいちん)が発行されるまでに、富本銭の鋳造時期が少なくとも2回あったことになり、わが国の貨幣の始まりに再検討を迫る。

 今回の富本銭は、藤原遷都の地鎮に使われたと見られる須恵器の注ぎ口に詰まっていた。取り出して調べたところ、直径約2.4センチ、厚さ約2.6ミリ、重さ約6.7グラムで、飛鳥池遺跡出土と直径は同じだが、平均重量は約1.5倍。表面に鋳出された字体がウ冠の「富」でなく、ワ冠で、行書風になっていた。七曜を表す七つの点も大きい。

 日本書紀は694年3月、「大宅朝臣麻呂(おおやけのあそんまろ)らを以て鋳銭司(じゅせんし)(造幣局)に拝(め)す」と記述。続日本紀も699年12月「始めて鋳銭司を置く」と伝える。

 日本書紀の683年に「今より以後、必ず銅銭を用いよ」と記されたのが飛鳥池遺跡出土の富本銭とみられている。同研究所の松村恵司・考古第1研究室長は「694年の遷都を機に、富本銭の鋳造場所が飛鳥池遺跡から藤原宮内の鋳銭司へと移ったのではないか」と話す。

 中世の模造品とされる八幡山城跡(和歌山県白浜町、16世紀前半)の富本銭が今回と同じデザインで、今後年代が見直される可能性がある。

 今回の富本銭は、4月18日まで同研究所藤原宮跡資料室で展示する。


arrow
arrow
    全站熱搜
    創作者介紹
    創作者 加比 的頭像
    加比

    SHICA'S HOME

    加比 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()